筋トレしている方にとって、「男性ホルモンが抑制される」と言われているデュタステリドを使用することは不安ですよね。そこで、デュタステリドが筋トレにとって悪影響なのか調べてみました。
長いです。
心して読んでください。
筋トレマニアの方は、この辺のお話は大好物だと思うので、
いつも以上に論拠を示しておきます。
うれしいでしょ(笑)?
ざっくりでいいや、という方はこちらをどうぞ。
筋トレしている人にデュタステリドはダメなの?【簡易版】
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もくじ
デュタステリドの男性ホルモンに対する影響
男性ホルモンはテストステロン、ジヒドロテストステロン、DHEAなど複数あります。
また、これら男性ホルモンは、全く別ものとして作られるわけではなく、
DHEAなどから少し加工することで性質を変えたものです。
中身の入ったペットボトルのコーヒー = DHEA
ブレンディのラベルを貼る = テストステロン
キャンペーンのシールを貼る = ジヒドロテストステロン
みたいな。
違うか?
それぞれ作用が違うので、同じコーヒーじゃなくなることもあります。
ラベルを貼っただけでオレンジジュースになったりもするのです。
まぁ、加工されるものってイメージをお伝えしたかったの(^^;)
その辺の話はこちらの記事をどうぞ。
デュタステリドが男性ホルモンを抑える?それはウソです。
まず最初に知っていていただきたいことなんですが、
デュタステリドは血中のジヒドロテストステロンを90.9%減少させます(7)
一方で、血中のテストステロンは20%ぐらい増加させます(8)。
ざっくりいってしまえば、男性ホルモンのバランスが変わるということです。
現時点でもこの分野の研究は未解明な部分が多く、
デュタステリドによって、体のどこで、どのホルモンが、どのくらいの量に変化するのか?
そしてその影響はどのくらいあるのか?
ということはまだ研究中のようです。
そのため、この記事では可能な限り集められた情報から、
推測するというレベルのお話になってしまうことをご了承ください。
それでは本題です。
筋トレの効果にはテストステロンが重要
これは当たり前のことですが、
筋トレ、というより、筋肉にはテストステロンが重要であることは数多くの報告がされています。
例えば、
血中のテストステロン量が減少すると貧弱な肉体になり脂肪が増える(1)
テストステロン減少による筋肉の減少はテストステロンの投与により復活できる(2,3,4,5)
去勢による筋肉の萎縮はテストステロンの投与でレスキューできる(6)
という報告たちです。
少なくとも、ジヒドロテストステロンが筋肉に重要であることは、
去勢による筋肉の萎縮はジヒドロテストステロンの投与でレスキューできる、
という報告からわかります(9)。
IGF-1の毛における作用
一般的に下垂体前葉細胞から分泌された成長ホルモンは、
肝臓に働いてIGF-1の分泌を促し、
血中に放出されたIGF-1が筋細胞、
あるいは骨細胞に働いて成長を促すものと考えられています。
マウスで、IGF-1は毛乳頭で産生され、感覚神経を刺激したのち毛の成長を進めます。
マウスにおいてジヒドロテストステロンは毛乳頭でIGF-1の産生を減少させ、その結果、感覚神経の刺激が阻害されることで、毛の成長を抑制させるようです(10)。
簡単に言えば、
毛の成長にIGF-1は重要なのに、
ジヒドロテストステロンはIGF-1を抑えちゃう。
ということですね。
IGF-1の筋肉における作用
これもマウスの実験なんですが、
IGF-1は逆行性輸送を通して、神経に栄養を与える効果と同様に、筋肉の増加を進めることができます。
ジヒドロテストステロンは筋肉においてIGF-1の発現を上昇させることがわかり、
ジヒドロテストステロンを投与すると、
神経筋肉接合部の神経支配がなくなる現象、
および神経軸索と運動神経の消失を減らすと言うことがわかっています(11)。
こちらも簡単に言えば、
筋肉の増加にIGF-1は重要であり、
ジヒドロテストステロンは筋肉でIGF-1を増加させる。
ということですね。
つまり?
デュタステリドでジヒドロテストステロンを減らすと、
・ 毛の成長にいい
・ 筋肉の増加によくない
ということになります。
でも、ちょっと待ってください。
デュタステリドで、テストステロンは20%近く増加しましたよね。
ということでテストステロン側もみてみましょう。
テストステロンは血中のIGF-1に重要
ヒトでテストステロンが欠乏すると血中のIGF-1の減少すると言うことがわかっています(12)。
つまり、血中のテストステロンが増えれば、血中のIGF-1が増える可能性が高いです。
テストステロンとIGF-1 in 筋肉
ヒトでテストステロンが欠乏すると筋肉中でのIGF-1の産生が減少することもわかっています(13)。
こちらは、筋肉というローカルな環境でIGF-1がテストステロンによって増える可能性が示されています。
つまり?
デュタステリドでテストステロンが増えると、
・筋肉の増加によい
ということになります。
ジヒドロテストステロンの筋肉における作用
これは以前にも触れましたが、
ジヒドロテストステロンは、筋肉を強化するイソロイシンの取り込みに重要であることがわかっています。
一方で、テストステロンはアミノ酸の取り込みに影響していなかったようです(14)。
この辺の話をまとめると、
テストステロンもジヒドロテストステロンも筋肉の増加には重要であるということですね。
テストステロンもジヒドロテストステロンも筋肉で生産される
嬉しいことにテストステロンもジヒドロテストステロンも血流で材料(DHEA)さえ届けば、
筋肉中で合成できることもわかっています。
ラットで、テストステロンとDHEAの活性化は骨格筋においてグルコース代謝に関連したシグナルを活性化させ、
筋肉(骨格筋)がローカルにDHEAからテストステロンやエストロゲンを合成できるということです。
さらに、骨格筋はローカルにテストステロンからジヒドロテストステロンを合成できるそうです(15)。
ジヒドロテストステロンは筋肉の増加に重要なGLUT-4の発現を上昇させることもわかっています。
他の研究では運動刺激によって、筋肉内でテストステロン、ジヒドロテストステロンが合成される可能性を示しています(16)。
これらの結果は、昔からわかっている運動と血中のテストステロン・ジヒドロテストステロンの増加とも一致しています(17)。
若い男性において、自転車での全力疾走運動をすると、運動の5分後にはテストステロン量、遊離テストステロン量、ジヒドロテストステロン量が上昇し、1時間後に元に戻ったというデータが報告されています(18)。
もちろん、他にも数え切れないほど多くの研究で、テストステロンが運動で上昇することが証明されています。
つまり?
材料であるDHEAやテストステロンが筋肉に供給されれば、
運動刺激でテストステロンやジヒドロテストステロンが合成される可能性が高いということです。
足りないピース
実はこのお話で足りないピースがあります。
それは筋肉中のデュタステリドの効果です。
頭皮中では、デュタステリドによってジヒドロテストステロン量が40-50%程度に抑えられます。(詳しくはこちら)
一方で、デュタステリドが筋肉中でジヒドロテストステロン量をどの程度抑制するのかというデータは今の所ありません。
さらに、筋トレのような一時的な筋肉中におけるホルモン量の変化というのは、かなり難しい研究になります。
今回調べた情報をまとめると、
・ テストステロンもジヒドロテストステロンも筋肉の増加には重要
・ デュタステリドはジヒドロテストステロンを減らしてテストステロンを増やす
・ 筋肉中で、DHEAやテストステロンからテストステロンやジヒドロテストステロンが作られる
・ 運動によって、筋肉中でテストステロンやジヒドロテストステロンが作られる
です。
さらに、デュタステリドは3β-HSDも抑制するというデータがあるので、血中でDHEAの濃度が上がることも予想されます。
そのへんの詳しい話はこちらをどうぞ。
デュタステリドが男性ホルモンを抑える?それはウソです。
つまり、筋肉でジヒドロテストステロンやテストステロンを作るための材料である、
DHEAやテストステロンは血中から多く供給できる可能性が高いと考えられます。
ここからは個人的な意見になりますが、
私は、そこまで神経質にならなくても大丈夫じゃないかなぁと思います。
まぁ、そこは、自己責任でお願いします(笑)
ほら、筋トレって、筋肉と相談しながらやるじゃないですか。
デュタステリドを飲んでみて相談してみるのもいいと思いますよ。
結論
少なくとも、
デュタステリドはDHEAを分解したり抑制するものではありませんから、
デュタステリドが血中のジヒドロテストステロンを90%抑えたからといって、
筋トレしても90%の効果が失われるということではないようです。
<追記>影響がないことが分かり、新しく記事を書きました!
→ザガーロ(デュタステリド)は筋トレ効果を減らす?いいえ、減らしません。
デュタステリドは間違いなくあなたの髪の毛を増やしてくれますし、
筋トレ効果を損なうことはありません。
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ノコギリヤシのサプリメントについてはこちらの記事をどうぞ
→ノコギリヤシエキスの育毛剤ならどれでも効くと思うのは間違いです
低出力レーザー育毛治療器(ヘアマックス)は光を当てるだけで発毛できるという、
冗談のようで本当の装置です。
→ヘアマックスの効果は?研究データを研究者がわかりやすくご紹介!
参考情報
(1) http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8954042
(2) http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9024227
(3) http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8855787
(4) http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10683055
(5) http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11320105
(6) http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/ar.20659/full
(7) http://database.japic.or.jp/pdf/newPINS/00065940.pdf
(8) http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26952737
(9) 現在捜索中(^^;)
(10) http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21839661
(11) http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22606355
(12) http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8923860
(13) http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9626114
(14) http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21606113
(15) http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18349113
(16) http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24704257
(17) http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23471952